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静岡地方裁判所沼津支部 昭和50年(ワ)383号 判決 1977年3月11日

主文

被告村松久勝は原告に対し金八〇二万五二八円及び内金七二八万二五二八円に対する昭和五〇年四月一三日から内金七三万八〇〇〇円に対する昭和五二年三月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

被告村松忠市は原告に対し金八〇二万二九二八円及び内金七三八万四九二八円に対する昭和五〇年四月一三日から内金七三万八〇〇〇円に対する昭和五二年三月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用これを三分しその一を原告のその余を被告等の負担とする。この判決第一、二項は仮に執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は「原告に対し、被告村松久勝(以下被告久勝という)は金一六三八万四〇〇三円、被告村松忠市(以下被告忠市という)は金一六五一万二〇〇三円及びこれに対する昭和五〇年四月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を各支払え。訴訟費用は被告等の負担とする。」との判決並びに仮執行宣言を求め、その請求原因として次のとおり述べた。

一  本件事故

原告は本件事故により後記のような傷害を受けた。

1  日時 昭和五〇年四月一二日午前九時一五分頃

2  場所 沼津市千本港町六の三地先交差点

3  加害車 普通乗用自動車(静岡三三な一三二)

右所有者 被告久勝

右運転者 被告忠市

4  被害車 普通乗用自動車(静岡五五の三二九四)

右運転者 原告

5  事故の態様 被害車が前記交差点で右折を開始したところ追従してきた加害車が中央線を交破して被害車を追越そうとしたため被害車に衝突した。

二  責任原因

1  被告久勝(自賠法三条の運行供用者責任)

被告久勝は加害車を所有し自己のために運行の用に供していた。

2  被告忠市(民法七〇九条)

同被告は加害車を運転して県道沼津土肥線方面から千本浜方面に向けて進行中、本件事故現場付近に不案内であり、加害車は他人の車で乗り慣れないうえ、大型車のために座席が深いのに同被告は短身で前方が良く見えなかつたのであるから、前方を十分注視して前車の動きを観察し、安全運転をしなければならないにもかゝわらず、これを怠り、自車前方を進行していた被害車の右折合図を見落し、追越禁止場所である本件交差点において中央線を越えて被害車を追越そうとした過失により本件事故を発生させた。

なお被告等は本件事故発生につき原告にも過失がある旨主張し、原告は被害車を運転して加害車と併進中二車線の外側から内側を直進中の加害車を追い抜き、交通整理の行われていない狭い三差路である本件交差点で急に進路を変更し、加害車の前に割り込みその進路を妨害したので、加害車を運転していた被告忠市は右側に避けて対向車線内に入つたのであり、被害車に右折方法不適当の過失がある旨主張するが、被害車が進路変更をしたのは本件事故現場から約一〇〇米後方である。

本件事故現場から約一六〇米後方に信号機のある十字路交差点がある。

被害車が港大橋から右十字路交差点に向つて進行してくると、加害車が赤信号に従つて停止線手前中央線寄り車線(以下内側車線という)に停車していた。原告が被害車を運転し宅地寄りの車線(以下外側車線という)を走行して同交差点に近付き、同交差点の停止線手前一〇米弱に至つたところ、前方の信号機の表示が赤から青に変つたため、被害車は停止することなく同車線を加速して進行した。

ところが右十字路交差点から約五六米前方にある沼津魚市場仲買商詰所(以下仲買商詰所という)の建物前の外側車線に白い車が停車していたため、被害車は右十字路交差点を抜け出すと直ちに内側車線に進路変更し、右仲買商詰所の建物東端前では右進路変更を完了した。その後、被害車は時速約五〇キロメートルで進行し、後方を確認して加害車が追従してくるのを見た後原告は本件交差点手前約三〇米の地点で右折の合図を出したうえで減速し、同交差点手前約八米の地点で右折を開始したところ、追越禁止個所を無謀にも追越そうとしたが加害車によつて衝突されたのである。

以上のとおり本件事故につき原告には何等過失がないから被告等の過失相殺の主張は失当である。

三  損害

1  受傷、治療経緯

原告は本件事故により頸部捻挫、両混合性難聴、両耳鳴症並びに右上腕打僕の傷害を受け、右難聴は自賠法施行令第二条による等級表第七級約二号に、右頸部捻挫は同等級表第一四級に各該当する後遺症となつた。

原告は昭和五〇年四月一二日から同年七月三〇日まで勝呂病院へ実治療日数四三日間通院加療し、同年四月二五日から同年七月三〇日まで杉山医院(耳鼻科)へ実治療日数五三日間通院加療した。

2  通院中の慰藉料 三八万円

3  後遺症の逸失利益 一三六六万八〇〇三円

原告は本件事故当時満五四歳の健康な男子であり大竹土木有限会社の取締役として月額一八万円の給与を得ていたが、なおこれとは別に個人で土木工事を請負い、月額少くとも一五万円の収益を得ていた。従つて原告の月額収入は三三万円を下らなかつた。

仮に右主張が理由のないものとしても、昭和四八年賃金センサス第一巻第二表の産業計、企業規模計、学歴計の年齢別平均給与額の当該年齢全額を一、一六倍すると平均月額給与は二〇万七一〇〇円となり、原告は少くとも同額の収入を得ていたものというべきである。そして前記等級表第七級の後遺症の労働能力喪失率は五六パーセントで、五四歳の男子の就労可能年数は一三年であるからホフマン係数は九、八二一である。

以上の事実を前提として原告の前記後遺症による逸失利益を計算すると次のとおり一三六六万八〇〇三円となる。

月収20万7,100×12×労働能力喪失率0.56×ホフマン係数9.821=1,366万8,003円

4  後遺症の慰謝料 五〇一万六〇〇〇円

自賠責任保険金額六二七万円の八〇パーセント

5  被害車の修理代 九万八〇〇〇円

6  レンタカー使用料 三万円

7  弁護士費用 一五〇万円

原告は被告等が前記損害賠償債務を任意に支払わないので、静岡弁護士会所属の原告訴訟代理人に本訴の追行を委任し、昭和五〇年一〇月八日手数料として二〇万円を支払い、判決言渡の日に成功報酬として一三〇万円を支払う旨を約束し、合計一五〇万円の損害を蒙つた。

8  損害の一部補填

原告は本件事故による後遺症に対する損害補償として自賠責保険から四一八万円を支給された。

四  結論

よつて原告は被告久勝に対し前三項2ないし4及び7の合計金額二〇五六万四〇〇三円から8の四一八万円を差引いた一六三八万四〇〇三円、被告忠市に対し前三項2ないし7の合計金額二〇六九二〇〇三円から8の四一八万円を差引いた一六五一万二〇〇三円及びこれに対する本件事故発生の日である昭和五〇年四月一二日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

被告等訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、請求原因に対する答弁として、第一項の事実のうち5は否認するもその余は認める。第二項1のうち被告久勝が加害車を所有していたことは認めるも、その余は否認する。同項2のうち本件事故当時被告忠市が加害車を運転し、原告主張の方向を進行中であつたことは認めるも、その余は否認する。第三項の1の事実は知らない。2は争う。3のうち原告が本件事故当時五四歳であつたことは認めるも、その余は争う。4は争う。5ないし8は知らない。第四項は争う。

旨述べ、主張として次のとおり陳述した。

一  本件事故発生については原告にも次に述べる様な重大な過失があるから過失相殺を主張する。即ち、

1  加害車と被告車は事件事故現場から約一五〇米手前の港大橋寄りの広い十字路交差点で赤信号のためいつたん停車した後、本件道路(片側二車線)を県道沼津土肥線方面から千本浜方面(東方から西方)に向けて加害車は内側車線を被害車は外側車線を併行して時速約五〇キロメートルで直進していたところ、前記十字路交差点の東寄り停止線から約一〇〇米先にある派出所付近で被害車は外側車線から内側車線を進行中の加害車を追越し、その進路直前に割込み、そのまま右折態勢に入つた。ところで本件交差点は東西に通じる幅員車道のみで約一三米の広い道路と北方に通じる幅員約六米の狭い道路が丁字型に交る三叉路交差点であり、信号機が設置されておらず、且つ右交差点の手前の外側車線に大型バス及びその後に乗用車が同車線をふさぐ格好で停車していたので、加害車を運転している被告忠市としては外側車線に進路を変えて被害車を避けることができず、やむなく進路方向左側から右折態勢に入つた被害車を避けるため右側に進路をとり、対向車線内に入り被害車との衝突を避けようとしたが及ばず、本件交差点の対向車線内で加害車と被害車が衝突した。

本件交差点は前記のとおり交通整理の行われていない狭い三差路であるから、右交差点を右折しようとする以上、原告は被害車の速度を上げて加害車の前に出るか、或いは速度をおとして加害車の先行を許すなどし、加害車の直進走行を妨げないようにしてその動静に充分注意し、自車の右折を早めに加害車に知らせるようにして外側車線から内側車線に移り、右折に入るべきであるのに、原告は前記停車中のバス等の約三〇米手前の派出所付近から急に外側車線から内側車線に進路を変更し、自車の右折を充分加害車に知らせるだけの距離的、時間的余裕を与えず、且つ、後方車の加害車の動静を充分見とどけないまゝ慢然右折態勢に入つたため加害車の進路を妨害し、結果的に本件事故をひきおこしたのである。

2  以上のとおり本件事故は原告の右折方法不適当の過失にも起因するから、被告等は過失相殺を主張する。〔証拠関係略〕

理由

一  本件交通事故

請求原因第一項のうち1ないし4の事実並びに加害車と被害車の衝突事故により原告が負傷したことは争いがない。

右事実に成立に争いのない甲第一号証の三ないし九、乙第一ないし六号証、証人木村智英及び上野道明の各証言並びに被告忠市原告本人尋問の各結果(但し被告本人尋問の結果中後記認定に反する部分は除く)を綜合すると次の事実が認められる。

本件交差点は東西に通じる車道幅員約一三米片側二車線の広い道路と北方に通じる幅員約六米の狭い道路がT字型に交わる三叉路で、交通整理が行われておらず、道路平坦で東西の見通しはよく、事故当日は晴天で舗装された道路は乾燥していた。原告は昭和五〇年四月一二日午前九時過ぎ頃被害車を運転して東西に通じる本件道路を県道沼津土肥線方向から千本浜方向に向つて西進したが、本件事故現場から約一六〇米東方の信号機のある十字路交差点(以下十字路交差点という)の入口約一〇米手前で進行方向の信号が赤から青に変つたので、そのまゝ交差点に進入し、時速約五〇キロメートルで本件道路の外側車線に入つたところ、右十字路交差点から約五六米前方にある仲買商詰所の建物前の外側車線にライトバンが停車しているのが見えたので、まもなく内側車線への進路変更を開始し、右仲買商詰所の建物の東端付近で右進路変更を完了した。原告は本件交差点入口から約三〇米手前で右折の方向指示器を出して後方を確認したところ、加害車が約六・四米右斜後方のセンターライン上を走行していたが、右地点は本件交差点に近く、しかも被害車はセンターラインの直ぐ内側を走行していたので、加害車が対向車線内に入つて被害車を追越すとは考えず、加害車の動勢について注意をはらわず、専ら対向車に注意しながら交差点の東側入口から約六米手前で右折態勢に入り、本件交差点の北進道路入口前付近(対抗車線の外側車線)に至つたところ、突然加害車の左前部が被害車の右ドアー付近に衝突した。

一方被告忠市は加害車を運転して被害車と同方向に向つて進行していたが、被害車が青信号に従つて十字路交差点内に入つた際、加害車は右交差点東側停止線で信号待ちのため一時停止していたので、発車が遅れ、被害車が本件交差点東側入口から約一〇三米離れた仲買商詰所の建物の東端付近で内側車線に進路を変更してからは被害車の後方を追従していたが、加害車は大型乗用車で座席が深いのに被告忠市は約一米五八センチメートルの短身で前方が見にくかつたため、被害車の右折信号を見落し、被害車は本件交差点を直進するものと早合点し、被害車が本件交差点東側入口から約三〇米手前付近で速度を落したので、これを追越そうとしたが、本件交差点の外側車線付近には大型バス二台とその後に乗用車が一台停止しており、外側車線からの追越しができないので、センターラインを越え対向車線内に入つて追越そうとしたところ、本件交差点東側入口から約六米手前で被害車が右折態勢に入つたので、あわてゝハンドルを右に切り被害車を右に避けようとしたが及ばず、本件交差点の北進道路入口前付近で加害車左前部を被害車の右ドアー附近に衝突させたことが認められ、以上認定に反する原、被告本人尋問の各結果は前掲甲第一号証の三ないし九、乙第一ないし五号証及び証人木村智英、上野道明の各証言に照して採用できず、他に右認定を覆えすに足る証拠はない。

被告等は本件事故は原告が被害車を運転し、交通整理の行われていない狭い三差路である本件交差点入口約三〇米手前で急に進路を外側車線から加害車の進行している内側車線に変更し、右折態勢に入り、加害車の前に割り込みその進路を妨害したここに起因する旨主張し、被告忠市はその本人尋問において右主張にそう供述をしているが、右は前掲乙第一ないし五号証及び証人木村智英、上野道明の各証言並びに前記認定事実に照して信用できず、他に右主張を認めるに足る証拠はない。

以上認定事実によれば本件事故は被告忠市が被害車の右折信号を見落し、交差点の約三〇米手前で対向車線内に入つて被害車を追越そうとした重大な過失によつて生じたものであるが、一方原告も被害車の右折信号を出した際加害車がその約六・四米右斜後方のセンターライン上を走定していたのであり、当時本件交差点の外側車線付近には大型バス二台とその後に乗用車が一台停止していて外側からの追越しができない状態であつたから、加害車が被害車の右側を追越すかも知れないことを予想し得られないことではなく、原告が加害車の動勢に注意し、加害車が追越した後に右折を開始すれば容易に本件事故を避けえたにもかゝわらず、その動勢に注意せずに右折を開始したことが本件事故の一原因になつたものと考えられる。よつて本件事故は被告忠市と原告の双方の過失の競合に基いて発生したものというべきであり、過失割合は前記事情を総合すると、原告二割被告忠市八割とするのが相当である。

二  責任原因

1  被告久勝

被告忠市本人尋問の結果によれば同被告は被告久勝から加害車を借受け運転中本件事故を惹起したことが認められ、加害車が被告久勝の所有に属することは争いがないから、被告久勝は本件事故当時加害車を運行の用に供していたと認めるのが相当であり、自賠法三条により本件事故によつて原告が蒙つた損害を賠償すべき責任がある。

2  被告忠市

前項記載のとおり本件事故は同被告の過失に基き発生したものであるから、同被告は民法七〇九条により本件事故によつて原告が蒙つた損害を賠償すべき義務がある。

三  損害

1  受傷・治療経緯

原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第二号証、第三号証の一、二、第四号証に原告本人尋問の結果を綜合すると、原告は本件事故により頸部捻挫、両混合性難聴、両耳鳴症並びに右上腕打僕の傷害を受け、昭和五〇年四月一二日から同年七月三〇日まで勝呂病院へ実治療日数四三日間通院加療し、同年四月二五日から同年七月三〇日まで杉山医院耳鼻科へ実治療日数五三日間通院し、治療につとめたが、治癒せず、昭和五〇年七月三〇日症状が固定し、前記難聴は自賠法施行令第二条による等級表第七級二号の右頸部捻挫は同等級表第一四級の各後遺症と診断されたことが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。

2  逸失利益の損害

(一)  休業損 六〇万円

原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第一〇号証、第一一号証の一ないし五、成立に争いのない第一二号証の一、二に原告本人尋問の結果及び前1項の事実を綜合すると、原告は本件事故当時五四歳の健康な男子で、同族会社である大竹土木有限会社の代表取締役として土木建築業を営み、忙しい時は事務員二人、人夫一四、五名を使用し、昭和四九年五月までは右訴外会社から一ケ月一八万円の給料を受取つていたが、その頃から経営が苦しく、原告の給料を経費に計上すると収支が赤字となり、官公庁から発注を受ける資格が喪われるので、やむをえず昭和四九年六月以降は右訴外会社から給与を受取らず、個人の資格で側溝、側溝上の小橋の構築、便所等小規模な増改築工事、土盛等の手間仕事を請負い、少くとも一ケ月平均二〇万円の収益を挙げ生計を建てゝいたが、前記受傷及び通院のため事故後約三ケ月間休業のやむなきに至つたことが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。

以上認定事実によると原告は本件事故に基く休業により六〇万円の得べかりし利益を喪失したものと認めるのが相当である。

(二)  後遺症による逸失利益 九四二万八一六〇円

前掲甲第一一号証の一ないし五に原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨並びに前(一)項認定の事実を綜合すると、原告は本件事故後一ケ月後には自動車を運転し、昭和五一年春頃から補聴器の使用を初め、補聴器をつければ日常生活に殆んど不自由がなく、右休業後も大竹土木有限会社の代表取締役として土木建築業を営み、民生委員及び保護司等の公職にも従事していたことが認められ、以上認定に反する原告本人尋問の結果は前掲各証拠に照して採用できない。以上の事実を綜合すると前記難聴による原告の労働能力喪失率は四〇%とするのが相当である。

そして、前記後遺症が固定した昭和五〇年七月三〇日現在原告は五四歳でその稼働年数は六七歳までの一三年とするのが相当であるからホフマン係数は九・八二一となる。

以上の事実を前提として原告の後遺症による逸失利益を計算すると次のとおり九四二万八一六〇円となる。

200,000円×12×0.4×9.821=9,428,160円

3  慰藉料

(1)  受傷及び通院中の慰藉料 三〇万円

前1、2項の事実を綜合すると三〇万円が相当である。

(2)  後遺症の慰藉料 四〇〇万円

前1、2項の事実に成立に争いのない甲第九号証の一、二及び原告本人尋問の結果によると、原告は本件事故により両外傷性混合性難聴となり、身体障害者等級表による六級の障害者と認定され、回復の見込みもなく、生涯補聴器を使用しなければならない虞れのあることが認められ、日常生活の不自由さだけでなく精神的に重大な打撃を受けたことがうかがわれる。その慰藉料は四〇〇万円が相当である。

4  物損

(1)  被害車の修理代 九万八〇〇〇円

原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第五号証の一、二によれば本件事故によつて損傷した被害車の修理代は九万八〇〇〇円であることが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。

(2)  レンタカー使用料 三万円

原告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる甲第六号証に右本人尋問の結果を綜合すると原告は被害車が破損し使用できなかつた昭和五〇年四月一二日から同月一八日までの間株式会社トヨタレンタリース静岡で乗用車を借り、使用料として三万円を支払つたことが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。

5  損害の一部補填 四一八万円

前1項の事実に弁論の全趣旨を綜合すると原告は本件事故による後遺症に対する損害補償として自賠責保険から四一八万円を支給されたことが認められ、右認定を覆えすに足る証拠はない。

四  結論及び弁護士費用

以上認定事実によると原告が本件事故によつて受けた人的損害は前項2、3の合計一四三二万八一六〇円であるところ、本件事故については原告に二割の過失があるからこれを斟酌すると一一四六万二五二八円となる。又原告が本件事故によつて受けた物的損害は前項4の合計一二万八〇〇〇円であるがこれについても右と同様原告の過失を斟酌すると一〇万二四〇〇円となる。

そして前項5の自賠責保険金を右人的損害一一四六万二五二八円から控除すると残りは七二八万二五二八円となるところ、原告本人尋問の結果に弁論の全趣旨を綜合すると、原告は本訴の追行を静岡弁護会所属の原告訴訟代理人に委任したことが認められ、その弁護士費用のうち右人的損害七二八万二五二八円と物的損害一〇万二四〇〇円を合計した七三八万四九二八円の約一〇%に当る七三万八〇〇〇円は本件交通事故と相当因果関係に立つ損害と認めるのを相当とする。

よつて、被告等は連帯して原告に対し八〇二万五二八円及び内七二八万二五二八円に対する本件事故発生の日の翌日である昭和五〇年四月一三日から、内七三万八〇〇〇円に対する本判決言渡の日の翌日である昭和五二年三月一二日から各支払済みまで民法所定年五分の、被告忠市は原告に対し前記物的損害一〇万二四〇〇円及びこれに対する本件事故発生の翌日である昭和五〇年四月一三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務がある。

以上の次第で原告の本訴請求は右の限度で理由があり、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条一項を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 元吉麗子)

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